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風に消えてく歌
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冬流
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愛するバンドのライブへ行く(生きがい)/着物を着て出かける/愛猫&愛犬
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BLやBL風味を匂わす詩風や小説風なものや その時の気分などを書きなぐっています。
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独占

教会の鐘の音が やたらとジョーの胸に不吉に響いた
足を速めて目的の場所へ向かう

教会が背にする山の上に小さな家がある
双子の兄弟が住んでいて 両親はなく 二人で暮らしている

ジョーは町の学生で いくつか年下の双子達と知り合ったのは
双子が揃って町の新聞屋でアルバイトをしていた時
配達をしている途中で町の不良に二人が絡まれていたのを
助けたことがきっかけだった

二人はとても仲睦まじく 健気に互いを支えあって生きていた

ジョーは二人に文字を教えるようになり 双子の家に通うようになった

そんな関係になってから数ヶ月
ジョーは兄弟を見る自分の目が違ってきたことを知った
そして兄弟たちの自分を見る目にも感情の色を感じた
そして 3人は少しずつバランスを崩し始めた

雲行きがあやしい
ジョーは双子の家に走った

数日前 双子のうちの兄 リオとジョーはキスをした
男同士だとか 相手がまだ子供だとか そんなことを考えさせない
そんな雰囲気が双子にはある

そのキスを双子の弟 リキが見ていた

リオとリキはその後 ジョーが帰った後にケンかになった

互いを殴りあい 罵り合って

それまでありえない事だった

それを知ったジョーはリキに謝った
そして リキともキスをした

けれど ジョーはその時 自分がどちらを本当に好いているかに
気付いてしまった

それを双子にも勘付かれたのは確かだった

また 修羅場になっていなければ良い

ジョーは家のドアをノックした
返事はない

ドアを開けると同時に雷が鳴り出した

「リオ リキ」

家の中は静まり返っている

二人の寝室で小さな物音がする
ジョーはゆっくりと寝室に向かった

半分開いていたドアを開けて中を覗く

「リ・・・」

こちらに背を向けているのが兄弟のどちらなのか
ジョーは判断できなかった

こんなことは初めてだ

今まで同じ服を着ていようとも そっくりな二人を
間違ったことはなかった
けれど 今はどうしてもわからない

こちらに背を向けて立ちすくむ その手と袖が赤く染まっている
そして 足元には1人が仰向けに倒れていた
胸が真っ赤に染まっている
床にも赤い染みが広がっていた

「・・・・!」

ジョーは声もなく倒れている方に駆け寄った
血の気の引いた青白い顔
すでに事切れている

ジョーは立ちすくんでいる方を見た
こちらも青白い顔をしている

外は大粒の雨が降り出した
屋根や窓を叩く雨粒と 空を翔る稲妻の咆哮がこだまする

「何があったんだ?どうしたんだ?なんで・・・」

ジョーは立ちすくむ双子の片割れの肩を掴んで揺さぶった

「僕たちは・・・ひとつに戻るために」

「え?」

小さな呟きは 雨音にも消えてしまいそうだった

「僕たちは 二人ではいけなかった」

蒼く透き通る瞳がジョーを捉えた

「ジョー もう僕たちはあなたを困らせるケンかをすることはない」

透き通るような白い肌 光を放つような金髪 そして
吸い込まれそうな 蒼い瞳

兄弟の容姿は寸分違わず よく似ている

「僕たちは いつもひとつに戻りたかった」

"二人"はジョーの背に手を回し その胸に顔を埋めた

「ここにあるのは抜け殻 僕たちはここに居るよ」

その時 ジョーは双子の気持ちを理解した
涙が溢れ出た

「僕たちは二人ともジョーに愛されたかった」

ジョーは二人とキスをした時に 片方を選ぼうとした
それが 二人をこうさせてしまったのか

罪を犯したのは 自分だ

「悲しまないで 僕たちはひとつになれたのだから」





一つしか選べないのなら 一つになった"僕たち"を愛して・・・

 

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