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風に消えてく歌
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冬流
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愛するバンドのライブへ行く(生きがい)/着物を着て出かける/愛猫&愛犬
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BLやBL風味を匂わす詩風や小説風なものや その時の気分などを書きなぐっています。
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入梅

どんよりとした灰色の空 大粒の雫が紫陽花の葉に落ちた
パタ パタ パタ・・・
雨粒は勢いを増していく

ギターを抱えたまま そんな窓の外を眺めて ぼんやり

頭の中 心の奥に 小さくメロディが流れてくる
それを捉えて 口ずさもうとしたけど 捉えることは出来ない

「どうしたの?スランプ?」

背後から声と同時に 白いマグカップが差し出された

「・・・そうなのかな?」

笑顔で返したけれど うまく笑えていなかったらしい

「そういう時はとことん他の事を考えるんだよ」

そう言ってミチヒロは笑った

コイツにはきっとスランプなんてないんだろう
飄々と つかみ所のないようなコイツは
少しもオレの心配をする様子を見せない
ちょっと淋しくて ちょっと腹が立った

「オマエはいいよ どんなハードルもヒョイッと越えられる
 そんな方法をいくらでも知ってるんだろう」

ミチヒロはきょとんとした顔でオレを見た

「そんな風に見える?」

ミチヒロはニヤリと口の端を上げた

「まあね ケンイチほどひとつのことを深く考えないし」

ミチヒロはマグカップのコーヒーをひと口飲むと
何かを思い出しているのか 遠くを見るような目をした

「オレってさ 軽いヤツに見えるよね」

ポツリと呟く

「『ま いっかぁ』って何でも済ませちゃうし」

雨脚の強まる窓の外
雨粒に打たれて すぐ前の公園の紫陽花の葉が揺れている

「でも それが個性じゃん
 ケンイチは そうやってマジメに考えて 目の前のハードルを
 飛び越えるための一番良い方法を考える
 そういうケンイチがオレは好きだよ」

オレはそんな言葉に内心驚いた
ミチヒロの視線はまだ遠くを見ているようだった
そんな横顔に 見惚れる自分に気付きながら 視線を外せない

「オレは ほら ハードルを飛び越せなくても 蹴倒しても
 それで先に行けるならいいじゃん って人間だしね」

ミチヒロの視線がこちらを向いて 微笑んだ

「正反対な性格の俺達だから 良いんじゃないかなー?」
「オレは オマエの性格が羨ましいよ」
「オレもケンイチの性格が・・・ちょっと羨ましい」
「お互い ないものねだり だなぁ」
「お互い 補い合いながらいこうよ」

俺達はそう言って笑いあった

梅雨の時期は 嫌いだけど
きっと その先には コイツの笑顔のような
青い青い空と 太陽が待っている

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