■ 慟哭

慟哭

ひとりで過ごす夜
真夜中に声を聞いた気がして
手を止める

窓を開けると　まだひんやりとした春の風
誰かの慟哭のような風の声が　遠くからかすかに届く

急に　ひとりで居ることが怖くなる

ひとりで生きていく　そう決めたのに
あなたを開放するために　笑顔でそう決めたのに
だめかもしれない　あなたが居ないことが淋しいよ

携帯電話を手に取る
ひとつボタンを押せばあなたに繋がるかも知れない
震える指をボタンの上にそっと乗せた

押せなかった

携帯電話を握りしめて　窓から空を見上げた
こんな都会じゃ　願いを叶えてくれる星なんて見えない

誰かの慟哭が聞こえる　きっと　それは　自分の声

あなたのそばに居たかった
あなたに一緒に居ようと言って欲しかった
あなたが信じてくれた僕の嘘

ひとりでも大丈夫　頑張れる

そんなの大丈夫なんかじゃないよ
本当は最後の夜に　あなたに縋って大声で泣きたかった
けど　あなたが僕を信じてくれたから
嘘だなんて言えなくて
今も　嘘だったなんて言えない

傍に居て　傍に居て
届かない手紙を書いては空に放つ
届かない言葉を空に向けて

さあ　嘘つきな僕
これからも嘘で身を固めて生きて行こう
本当の自分らしさなんて　そんな生き方できないから
嘘だらけのこの世界じゃ・・・・・

あなただけは強く　真実を掲げて　輝いて
嘘つきの　ただ一つの真実の願い
それは　僕の胸の中のおまじない

そして僕はまた　嘘をつく